【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
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ぼんやりとした意識の中で

私の額や瞼や頬に柔らかい感触。

心地よくて優しい温もりに

そっと目を開けると

「…羽美花?…目が覚めた?」

黒のガウン姿で私に腕枕をして

抱き締めるように隣に横たわって

私にキスをしている氷室部長

…咲輝翔さんがいた。

私…意識飛ばして寝てたんだ…。

体に残る感触と疼く違和感。

さっきまでの熱い行為を思い出して

何だか恥ずかしくなる。

「…ごめんな。無茶し過ぎたな。
体…痛くないか?」

片方の手で私の頭を撫でながら

心配してくれる彼に

「…だい…じょうぶです。」

そう言いながら寝返りを打とうとした時

「……!?」

裸だったはずの私はいつのまにか

見に覚えの無い物を着ていた。

水色のフリース生地にレースがついた

どう見ても女性向けの

ワンピース型ルームウエア。

もしかして咲輝翔さん、眠ってる間に

私に着せてくれたの?

口を開きかけたところで気づいた。

…これ、私のじゃない…。

「………。」

嫌な予感が走った。

まさか、元カノとか元奥さんが

残していった所持品?

あっ…。さらに思い出す。

行為の時、彼は避妊具してた。

嬉しいと思ったけど、その避妊具も

元カノや元奥さんとした時から

残っていた物?

満たされた幸せの余韻から一変

私は思考が硬直してきた。

彼はバツイチだけどモテるから

私以外の誰かと過去にそんな関係が

あったとしても、男性だから当たり前。

私だってほんの数日前まで

満君と付き合っていたから

彼の過去の女性との行為に

口出しする資格はない。

でも、なぜだろう…。

元カノか元奥さんの所持品を

着せられた事に…胸が痛い。

涙がポロリと流れた私に

「…羽美花?ちょ…おい、どうした!?
何泣いてるんだ!?
やっぱり、痛かったのか!?」

彼は少し体を起こした。

私は首を横に振りながら起き上がる。

涙がポロリポロリと頬を伝う。

彼も起き上がり

「…羽美花…どうして泣いてるんだ?」

涙を拭いながら私を覗き込んだ。


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