【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
「…羽美花。」

「……。」

久々に見る満君は、若干やつれたような

表情を浮かべて立っていた。


いつ来たの?何か用?

何を言っていいのかわからず声が出ない。


それに…何だろう…嫌だ。

あんなに好きで、愛した人だったのに

顔を見た途端、私の中で

“ゾクッ”と感じた嫌悪感。

見てしまった豊島さんとの情事。

私より豊島さんとの将来を歩む事を

宣言したショッピングモールでの出来事。


あの日、あの時、この目で見て聞いた

悪夢のような光景が

再び脳裏によみがえるようで…。


「…羽美花。話があるんだ。」

満君は私に近づいてきた。

「…嫌だ…来ないで。」

私の口から出た言葉に

「…何だよ…嫌だって。」

満君は若干イラついたような

表情をしながら私に向かって

歩幅を進めてくる。

私は後ずさると

「…帰って。何も話したくない。
二度と会いたくもない。」

と満君を睨みつけた。

すると

「…何だよ。
ただ、謝りに来ただけなのに。
それすら聞いてくれないのかよ。」

私を睨みつけて

さらにジリジリと歩幅を進めた。


…助けて…咲輝翔さん。


指輪がはめられた右手を

左手で握って私は目を瞑った。


その時、“ギュッ”と

後ろから誰かに抱き締められ

「…ごめんな。」と耳元で囁かれた。


…あっ…わかる。

この声…このシトラス…。

このガッチリした腕の強さ。

視界に映るこの繊細な指。

私がつけた、手の甲の引っ掻き傷。

そして…安心出来るこの温もり。

コート越しでもわかる。

たった数日間でも

優しく、激しく、荒々しく

この人に抱かれた私の全身は

この温もりを覚えていた。

私の身体中に咲いた紅い華が

あなたを求めていた…待っていた。

「…遅くなってごめん。」

久々に聞く優しい声に

ホッとした私の目から涙が溢れた。


































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