【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
…どうしよう。

全身が硬直し始めてきた。

…“ドキドキドキ”と

心臓がうるさいくらい高鳴る。


でも、今の私は

まともに顔を合わせる勇気はない。

あの瞳に見つめられるのが恐い。

妖艶で私を射抜いてしまう

あの表情を見ると

愛された全身が“キュッ”が疼く。

キスされたいと思ってしまう。

触れて、抱きしめられたいと思う。

でも…彼は、今何を思い

何を考えてるのかわからない。

『復縁』

『氷室さんが好きなのは“俺の姉”』

『遊ばれている』

『捨てられる』

『追い詰める』

メールの内容がグルグルと

頭の中を駆け巡る。

何をされるのかわからない

襲ってくる恐怖感と

彼に捨てられてしまうんじゃないかと

纏わりつく不安に

全身が縛りつけられるように

身動き出来にくくなった私は

知らず知らずのうちに

あの男性の言葉に流されてしまっていた。



氷室部長は他の社員逹と話をしながら

ご飯を次々と

トレーに置いて進んで行く。


返却口にいる私との距離が縮まる。


このままだとこちらに来てしまう。

確実に顔を合わせてしまう。

いつもなら、会えると嬉しいのに

今の私は、自分がわからなくなっていて

“キュッ”っと胸が締め付けられた。


逃げたい…早くここから。

立ち去りたい…ここから。


ごめんなさい…やっぱり私

今は挨拶も無理です。


もう一人の私が悲鳴をあげた。



私は硬直した足を無理やり動すと

前を向いてスタスタ歩き出し


氷室部長達の横を擦り抜けた。


その瞬間、彼が微かに

私を見ていたような気がした。

でも、私は

何も気づかない振りのまま社食を出た。







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