【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
暫くの沈黙の後

「…羽美花、本当に大丈夫なのか?
俺の話…聞いてくれるか?
受け止めてくれるのか?」

何だか子どものように

泣きそうで不安気な顔で

咲輝翔さんは私を見つめる。

以前私が笠置満に裏切られた時

話を聞いてくれたあの時見せた

切なげな表情よりもさらに…。

そんな顔にさせるような

彼の秘められた過去は

きっと悲しい事があったに違いない。

まだ何も聞いていないのに

涙が溢れそうになる。

熱があるからかな…。

でも、聞きたい…。

今すぐにも私が聞いてあげる事で

心に光が差し込むなら、私が救いたい。

涙が出そうになるのを堪えて

一つ深呼吸をした。

そして

「…話して下さい。
咲輝翔さんと静花さんとの過去と。
戸叶さんの話を…。
…ちゃんと受け止めます。
私はずっといますから…。

聞きたいです…お願いします。」

そう私はお願いした。


それを聞いた彼は私を反転させて

向かい合うような姿勢になった。

ドキドキする私に彼は

そっと抱き締めながら

「…わかった…ありがとう。
病院で言ったのに躊躇ってしまった。
…長くなるけど
聞いてて辛くなったらすぐ言えよ。
俺の話をわざわざ我慢してまで
聞かなくていいからな?
それだけは絶対に約束して…いいな?」

真剣な眼差しに、私は唾を飲むと

「……はい。」

目を見て頷いた。

私の返事と同時に彼は

膝に置かれていた私の右手に

自分の手を重ねて指輪をなぞった。

そして

「…実は俺も
誰かにこんな事を話すのは初めてで
正直言うと…恐いんだ。
両親や妹の夏希は勿論知っているけど
親戚とか藤堂兄弟には
この事をあまり多くは話してない。」

えっ!?親戚も知らない内容?

藤堂部長すらも…?

「…ツグは夏希から
聞いてるかもしれないが
皆…俺を気遣って伏せてくれてる。
だから、俺は今まで多くを語らずに
無理やり押し込めて生きてきた。
…だから、こうして話すのは
羽美花が初めてになる。
…じゃあ…話すよ。」

彼は一瞬だけ瞼を閉じた後

もう一度開いて私を見つめて

静かに話し始めてくれた。
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