【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
辛い…。

何とも言えない….…。

俺の心に宿る嫉妬や悔しさや悲しみ。

手を伸ばしても届かない想いに

俺の心は張り裂けそうだった。


戸叶…お前が羨ましいよ。

関東へ行く事を静花は

泣いて寂しがってくれるんだから…。

縋りついてくれるんだから…。

俺なんて…。

例え東京へ戻ったとしても

静花は何とも思わないだろう。

多分そこで俺との縁は

終わりになる事だろう。

…わかってるよ。

俺は男友達の一人に過ぎず

戸叶の友人でなければ

飲みにも遊びにも誘われない事も…。

俺は戸叶のオマケである事も…。



俺だって、入学式の時から

静花を見てたのに

手も握ったのに

あの微笑みに落ちたのに。

ずっと静花が好きだったのに

告白しようと思っていたのに

どうして、彼女が好きなのは

俺ではなかったんだ…。

どうして、俺より先に

2人は出会っていたんだ…。


『…また振っちゃったの?
氷室君、モテるんだから
付き合っちゃえばいいのに…。』

静花が時々そう言うたびに

俺はどんなに傷ついている事か

わかっていないんだ…。


でも、戸叶は友人だ。

それに静花と戸叶は

高校の同級生であり

戸叶は知らなくても静花は

そっと想いを寄せていた。


羨ましいよ…本当に。



両手がいつの間にか

爪が食い込むほどギュッと握っていた。

…はぁ。

再びため息をつくと

『急用出来た。先に帰る。』

と、戸叶にメールを送った。


俺はやりきれない想いに

唇を噛み締めながら歩き続けた。


< 262 / 320 >

この作品をシェア

pagetop