【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
年明けに事態が急変した。

遠距離恋愛を育んでいたはずの

静花と戸叶が別れたのだった。

理由は多忙によるすれ違いだった。

静花は入社して半年が経った頃

業務態度や仕事への熱意を認められ

上層部から昇進を条件に

販売員からバイヤー部門へ

異動となった。

青果担当になった彼女は

遠方の農園などへ視察や契約を結びに

出張へ行く回数の多い生活になった。

一方で戸叶も上司に気に入られて

入社2年目にして出世コースへと進み

両方ともに仕事も充実して

職責もついて回るようになった。


遠距離と多忙で

段々会える時間も減っていき

会っていても

生活環境や疲れにより

不満や溝が深まっていくようになった

2人は喧嘩も増えた為に

戸叶から別れを切り出されたと言う。



しかし、戸叶を失って初めて

未練がある自分に気づいた静花は

度々俺を居酒屋に呼び出すようになり

『肇とやり直したい』

『無理と言われた。
どうしたらいいか…。』

と、戸叶への未練や

復縁したい旨の相談を

聞くようになった。


…俺は複雑だった。

ここにはいない

戸叶への未練を聞いても辛いだけ。

しかも

『肇が好き』と酔って泣かれると

なおさら辛くて堪らなかった。

復縁せずに俺を選んでくれれば

絶対に大事にするのに…。

口に出来ない想いが宙に舞った。


でも、俺は2人で会えるなら

気長に好きになって貰うしかないと

静花の聞き役に徹し

アドバイスもしていた。

そして

関東支社への出張の際には

『静花がまだお前に未練がある。』

『静花とやり直せないのか?』

と、戸叶に静花の気持ちを

代わりに伝えてはいた。


しかし、入社2年目の

桜が美しく舞い散る季節に

差し掛かろうとした時

戸叶の口からある言葉が出た。

『…静花とはやり直せない。
やり直してもまたダメになる。
実は俺…。
会社の部長の紹介で見合いをした。
取引先の会社のご令嬢だ。
その女性と結婚して
行く行くはその会社を継ぐ事になる。

…静花とは今後一切連絡は取らない。』



復縁を願う彼女にとって

それはとても残酷な結果となった。












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