【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
静花は交際当初から俺に対して

恋愛感情はなかったと言う事実まで

加えて知らされる事にもなった。

話す気になったのか

彼女の体調を気遣って

代わりに説明していた戸叶を制した。


「…肇に別れを切り出されて
復縁も拒否された挙句に
結婚しちゃってた。
…ボロボロだった。
友達だった氷室君に
相談にのって貰ってるうちに
優しさに甘えて依存してた。」

「氷室君の気持ちにも気づいてたし
『いつか好きになれるだろう』って
思ってて、プロポーズされた時も
もう肇とは結ばれる事はないから
条件付きでプロポーズを承諾したの。

“悪いようにしない。”
“大切にしてくれる。”って…。」

今まで俯いていた彼女が

顔を上げて話し始めた。


「…でも、結納が済んで婚約して
打ち合わせや衣装とかを決めるのが
進んでいくうちに
結婚に迷いが出てきた。
好きじゃない人と結婚する事に…。
これで良いんだろうかって…。
いつも浮かぶのは、肇の顔や
過ごした思い出ばかりで
いつの間にか頭から離れなくなってた。
もう結ばれる事はないのに…。
もう二度と会えないのに…。」

「…こんな気持ちのままでは
氷室君に悪いと思って
婚約解消を申し出ようかと
何度も悩んだ。
…でも、招待状発送まで進んでて
私との結婚生活を楽しみにして
幸せそうな顔をしてくれる
氷室君や御両親や私の両親を見てたら
…言い出せなかった。」

「…どうしていいか
わからなくなってた時に
出張先の神戸で、前澤君の妹の
千華子(ちかこ)と偶然会って
お茶した時に、千華子の口から

『戸叶さんは今京都にいます。
奥さんと別居されてて
離婚協議中らしいですけど
“来年には成立するだろう”とかで
成立したら戸叶さんは
私の夫の知り合いが経営してる
神戸の会社に
再就職するらしいですよ。』

って聞いたの…。」


『俺の事が好きじゃなかった。』

『好きでもない俺と結婚する』

『戸叶が忘れられなかった。』



手紙を既に読んではいるが

彼女の口から直接聞くこの言葉に

頭が真っ白になり、目を見開く俺に

静花は話を続けた。

















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