【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
***

その後、俺の口座に

戸叶と静花と甲田の父親から

数回に渡って

多額の慰謝料が振り込まれた。

俺はいらないと固辞したが

「…貰っておけ。
お前は深い傷を負わされたんだ。
その金で新しいマンションにでも
引っ越したらどうだ?」

と、父親に言われて

仕方なく受け取ったが

引っ越しする気力もわかずに

彼女がいないマンションで

一人過ごす日々だった。


幸い、俺は主任だったから

仕事をしている間は嫌な事を

忘れる事が出来た。

しかし

完全に頭から離れてはいかない。

無理やり忘れても

何かの拍子にふと浮かんでは

俺に纏わりついて

胸を苦しめて、心を蝕んでいく。

あんなに辛い修羅場のような光景は

俺の瞳に焼き付いてしまっていた。



それだけ心に深い傷を負った俺は

あの日から

人を好きになる気持ちに蓋をした。

もう傷つきたくはない。

誰も好きになりたくはない。

俺は誰かを愛する資格も

誰かに愛される資格もない。

事実婚扱いになった元妻の浮気も

俺は見抜けなかったんだ…。

隙があったから騙されたんだ。

拒否されるなら、一人でいる方がいい。

そう思いながら業務に邁進した。




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