【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
そんなある日

俺は部長から呼び出され

応接室に通された。


座るように促されて

向かい合って座ると

「…氷室君、辞令だ。」

と、目の前のガラステーブルに

一枚の用紙が置かれた。

手に取った俺は

「…えっ!?」

と思わず言葉を発した。



『**人事異動の件**

A社関西営業所主任

氷室咲輝翔

上記の者

3月15日付を以って

A社本社営業課

課長代理に任命する。』


辞令を持ったまま

黙ったままの俺には部長は


「…事実上の出世だ。
来年お前は課長になる事が
大筋で確定している。
場合によっては
親会社のSコーポレーションへの
引き抜きもあるかもしれない。」

課長代理で、来年課長だって!?

Sコーポレーションへの引き抜きも?

戸惑う俺には部長は

「氷室君…お前はこんな所で
萎れている場合じゃない。
廃れているのはもったいない。
地元に戻って、新しい環境で
本社で才能を開花させて来るがいい。
それに、今は辛いだろうが
お前はまだ若いから
いずれまた誰かと巡り会える事も
あるかもしれない。
その時は今度こそ幸せになれよ!!」

婚姻届までは言ってないが

俺の離婚を知っている唯一の人から

そうゲキを飛ばされた俺は

「…是非……頑張ります。」

と、深々と頭を下げた。



一度は勧められた、本社への異動。

あの時は静花がいたから保留していた。

でも、彼女はもういない。

遠慮も気兼ねもいらない。

あのマンションからも引っ越せる。

地元へ戻れる。

もう会う事なんてない。

A社で必要とされてるなら

実力と才能を開花させるのも悪くない。

そう思いながら

新しい環境、新しい職場へと

想いを馳せた。

< 292 / 320 >

この作品をシェア

pagetop