【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
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「…10分前だ。
そろそろ戻った方がいい。
俺も戻るよ…。」
男性の声にハッとした。
そうだ、名前をまだ聞いていない。
「…あっ、あの…お名前は?」
帰ろうとした男性に口を開くと
「…ああ。まだ、言ってなかったか。」
と、呟きながら
男性はスーツの内ポケットから
何かを取り出し
「…これが俺の名前。
じゃあ、頑張れよ…。」
と言って、私にそれを渡すと
背を向けて颯爽と戻っていった。
「…野村さん!!誰!?
あのイケメンな人!?知り合い!?」
いつの間にか亜美ちゃんが戻っていて
私の傍に寄ってきた。
「…あっ、ううん。
昔、ちょっと具合悪くなった時に
助けて頂いたから
お礼を言っただけで
特に別に知り合いじゃないよ。
…10分前だから戻ろう。」
そう話題を切って
私は研修会場へと戻った。
男性から渡されたのは名刺だった。
『A株式会社
営業部課長 氷室咲輝翔』
と、その名刺に書かれてあった。
氷室さんて言うんだぁ…。
あっ、課長さんだったのかぁ…。
私、凄い人に助けられたんだね。
昼休み終了兼
午後の就業再開を知らせる
チャイムが鳴り
私は財布のカード入れに
氷室さんから頂いた名刺を差し込んで
バッグに仕舞うと
研修モードに切り替えた。
こうして
私は咲輝翔さんとの再会が叶った。