【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
…普段、顔を合わせると
優しい瞳と、優しい表情で
話してくれる氷室部長。
でも、今日はいつもと違った。
『裏切り行為が嫌いなんだ。』
と口にした時のその瞳は
凄く悲しく、切なそうに見えたのは
私だけなのかな?
きっと、過去に
何かあったのかな…。
理由を決して口外しないで有名だけど
氷室部長、バツイチだから…。
当日のレストランで
満君と豊島さんを見た時に
何かを思い出したのかな?
就活中に助けられたその後は
入社後まで会う事もなく
普段もメンテナンスや
顔を合わせた時に
話す程度の関わりぐらいなのに
他人の私の為に
店内に乗り込んでまで
他人の2人に叱責するくらいだから
きっと何かが…。
でも、それは
私が足を踏み入れる事ではないから
それ以上、何も聞く事は出来ない。
その表情の理由も…。
それに、私だって…。
人の事を言える立場でもない…。
満君と豊島さんの事が
ずっと引っかかって
ココロの花が
不安で揺れているんだから。
どうしていいかわからず
何を話していいのかわからなくなり
黙ってしまった私に
「…悪かったね。
余計な事を言ったかな?
何か困らせたみたいだね。
今の話…気にしないでくれ。」
と、氷室部長が普段話す表情に戻った。
私も、ハッとなって
「…あっ、いえ。すいません。
氷室部長が悪いワケじゃないです。
私が勝手に…。」
と言ったところで口籠ってしまった。
これは氷室部長には話す事じゃない。
話して、また迷惑かけられない。
黙って俯いてしまった私に
「…野村さん?」
と、氷室部長は首を傾げていたけど
やがて、スーツの内ポケットから
何かを取り出すと
サラサラと何かを書いて
私の前に差し出した。