【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
長身で端正な顔立ちをして
ダークブルーのスーツと
チェック柄のネクタイを
お洒落に着こなした氷室部長。
そんな部長は
「…こんにちは。野村さん。
メンテナンスご苦労様。
…変なところ、見られてしまったね。」
と、肩を軽く竦めながら
やや気まずそうな顔をして
再び私を見下ろした。
部長の切れ長の目が私を捉える。
私もこの気まずさを何とかしたくて
「…あっ、いえ、その…。
すいませんでした…。
立ち聞きするつもりは
一切なかったんですが
引き返すタイミングを
逃してしまいました…。」
と、慌てて謝った。
氷室部長は
「…いや、謝らなくていい。
野村さんは悪くないし
わかってるから。
…柴田も悪かったな。
連絡してくれて助かったよ。」
と、柴田主任に視線を向けた。
「いえいえ。
お役に立てて良かったです。
でも、野村さんは初めて見たから
かなり驚いて
引き返すタイミングが
わからなくなったみたいです。
…うーちゃん、そうだよね?」
柴田主任が同意を求めるように
私を見た。
間違いではないから頷いた。
確かに驚いて
その場から動けない自分がいた。