不器用な僕たちは……

あの場所

…翼…







現在3時半……








今日は早すぎるか…?








いやでも昨日遅れたからな…










昨日全然澪喋ってくんなかったからな…








怒ってたよな…絶対……








許してくれるかな…









♪♪♪~♪〜♪♪♪〜









チャイムの音と共に校舎からたくさんの声が聞こえてきた










花壇で待っていたから生徒が部活へ行ったのだと直ぐにわかった










……でも










澪は来なかった













やっぱり怒ってんじゃん…







正門で待ってた方が良かったな……











いや、もしかしたらまだなんか居残りかなんかかも…


『あ、やっぱいた』














澪?いや、声が男だな…










自分にかけられた言葉かと疑問に思いながら振り返る










『澪のおじさん……だっけ?』









『おじさん?』









『あんたそーなんでしょ?
澪のおじさんで塾のセンセイ』










俺が澪のおじさん?









これは…








合わせといた方がいいのか…?










『あぁ……うん、そう…澪のオジデス

澪の友達?』









『うん』








『澪がいつもお世話になっているね…』











なに言ってんだよ俺…











『その…澪いないかな?
昨日迎えに行こうとおもってたら約束の時間よりも遅れちゃって…
多分怒ってるんだと思うけど…』









『澪は今日早退しましたけど

まぁそりゃあんな寒い日に4時間もずーっと外にいたんだから当たり前だけど』







『4時間も⁈
だって昨日水曜日なんだから特別日課でいつもと同じだから1時間も待ってないんじゃ…』








『はぁ?
んなわけねーじゃん』









じゃあ…なんで澪は俺にウソなんか…










『今日言ってたましたよ、澪

翼さんが今日くる予定だからもしアタシが早退しちゃったら…ってね
俺にあんたに待たなくて良いって報告しろって

それで高熱だしてソータイしちゃったんだよ』











澪………なんでそんなに…






『自分は待たされといて熱だして

なのに待たせたヤツにはこうも優しくするなんてな、』















俺……











『じゃ、これだけ伝えに来ただけなんで、』













…澪!!!!















気が付いたら俺は車に乗り澪の家まで来ていた










ピンポーン♪








はい、と中から声がしてドアが開く







『これはまた、セールスマンですか?』






『あ、いや…澪さんの通われてる塾の講師です
今日は澪さんが学校を早退されたと聞いて……』






『あぁ、熱があると学校から電話がきましてね、まだ自分の部屋で休んでますよ』






『ひどいんですか…』






『いやね、ひどいといっても1日寝れば治るモノですから』







『僕のせいなんです…僕が何時間も澪さんを待たせてしまって…』







『まぁまぁ…こんな外で話されないで下さい、先生こそ風邪を引いてしまいますから…
どうぞ中へ、』




優しそうなおばあちゃんだな、なんて思った



澪は今このおばあちゃんと住んで幸せなのだろうか




居間に通され丁寧にお茶まで用意してもらってしまった





『実は昨日、僕は澪さんに家に送ると良い、学校に迎えに行く予定だったんです…
ですが、僕が時間よりはるかに遅れてしまい…澪さんは何時間も待たなければならなくなってしまったんです…』



『そうお気になさらずに、先生

あの子はここ最近風邪気味でしたから先生のせいではありませんよ』




『本当に申し訳ありませんでした…』




『そんなに頭を下げないで下さいな』



その時、居間の障子がカラカラと音をたてた





『やだっ翼さんっ…なんで⁈』



『澪ちゃん、先生が身体が心配だと様子を見にきてくれましたよ』




『ばあば変なこと言ってないよね⁈
つ…せ、先生!アタシの部屋に来て!!!!

ばあばは来なくていいからっ』





『はいはい…じゃあ先生、仲良くしてやって下さいね』



『もー先生はやくきて!』






澪に急かされ居間を出て、澪の部屋に連れていかれる





『…熱、大丈夫なの?』



『こんだけ喋れるから大丈夫!』





でも…







『顔真っ赤だな…』





手を澪の頬につける






まだ熱は大分あるみたいなのにこんな元気なフリして…







俺が罪悪感持たないように、か?









『ごめん、ホントに……』





澪の顔が見れない







うつむくしかない







『ゴメン…』










『……アタシ翼さんが来てくれるって信じてたから待ってたの

ホントは翼さん忙しかったんでしょ?なのに来てくれるなんて…

やっぱり翼さんは優しいよ

だから顔上げてよ』








『………ゴメン、澪…

今日こうして来たのは…』






沈黙の間が、澪の部屋に流れる






澪は心配そうな顔で俺の顔を見る










『これからは、また…[先生]と[金原さん]って呼びあおう…

園芸部も…悪いけど……』


『…なんで…?

アタシ…翼さんといれて…楽しかったし………』






ゴメンな



多分この方が良いよ



これからも、ずっと…





『翼さん…?』




澪そんな目で俺を見ないでくれ




出来ることならそんな顔、させたくなかった







『…ちゃんと休んで熱冷ましなよ…


じゃあ、バイバイ…』





『やだ……

そんなのヒドいじゃん…

アタシ散々待ったんだからこれからも今までみたいに[翼さん]と[澪]って呼びあおうよ…



アタシ……ホントは…』





『澪…』



ダメだ、それは言っちゃいけない




『ホントは翼さんのこと…‼』

『澪‼』





澪は氷みたいにかたまり


俺は多分、迷子みたいな子供の目をして澪を見てたと思う






『ゆっくり休んで…』









その後急いで澪の家を出た




気付いたらいつか澪と一緒にきたあの場所へと来ていた






もう夕日は沈んでる






『…寒………』





これからはもう[澪]と呼べる日はこない…





今までのことは【ただの親切】になる



















本当は







片思いの愛だったのに…








それでも俺はこれ以上君を傷付けないために……










『最後位はかっこよく……ね…』








明日からまた、日常に戻る…


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