【短編】羽根月
◆君が見ていた世界
彼女が今まで
視てきたもの
青い空
新緑の鮮やかさ
眩しい陽射し
魂に刻まれた
数々の思い出
生まれてから
眺めていた世界
彼女だけが知る景色
これから二人で
見るはずだった世界
あの世界は
全て消えてしまった
彼女の中から
少しずつ
崩壊してゆく世界…
『もう元には
戻らない』
時間と共に
一つずつ
泡のように
消えていくのが
怖い
まるで
何もなかったかの
ように
世界が
廻り続けているのが
怖い
──まだ憶えてる
──まだ思い出せる
それだけが
【糧】だった
俺
名取 大地
─ナトリダイチ─
17歳
彼女
安達 里茉
─アダチリマ─
25歳
羽根月
─俺と彼女の99日─