【短編】羽根月
電話が切れて、ほんの数秒でオレは猛烈に後悔した。

そして自己嫌悪…

何やってんだ。オレ。

我ながら呆れてしまう。自分の子供っぽさに。

年上の彼女と付き合ってる事で、自分は大人みたいに思ってたのに、思い通りにならないからってガキみたいにキレてさ…

…だって、どうしたらいいのか分かんないよ。

こんなに里茉が大事なのに
どうして上手く言えないんだろう──…

オレはヘコみながら
発信履歴の一番上にある番号に電話をかけた。

『****…大地…?』

里茉が悲しそうな声でオレの名を呼んだ。

彼女の声を聞くと切なくなるのは何故なんだろう。

彼女の声を聞くと穏やかになれるのは何故なんだろう。

「里茉…ゴメン」

オレはこの前の彼女を思い出しながら、呟いた。

「ワガママばかり言ってゴメン。でも側に居たいんだ…里茉に会いたいよ…」

『…泣いてるの?大地、何かあったの…?』

「ないよ…」

『でも、』

「…いいんだ。テストが終わってからでいいよ」

『あたしの方こそゴメンね。融通がきかなくて』

「先生だもん。当たり前だよ…ね、里茉」

『…ん?』

「愛してるよ…それだけは憶えていてくれよな」

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