【短編】羽根月
彼女の深いため息が聞こえてきた。

やはり、無茶苦茶
怒っている。

「そんなのどうだっていいよ!里茉」

「何しに来たの!?授業受ける気がないなら出ていきなさい!

それから!ちゃんと『安達先生』って呼びなさい!」

「嫌だ!今じゃなきゃダメなんだよ!」

オレ達の怒鳴り合いに、オレと仲の良かった井上が止めに入る。

「だ、大地!落ち着けよ!」

クラス中がワケもわからずにザワめく。

オレは全然構わなかった。
むしろ確信犯。

わざと授業中を狙った。ここにいる皆が証人になるだろうと思って。

こんな話し、絶対に彼女は聞いてくれないから。強引すぎるかもしれないけど…。

「大地!ヤバいって!外に行こう、な?!」

「ほっといてくれ!里茉──オレ…」

「やめて!」

「どうした!?授業中だぞ!安達先生…!」

騒ぎを聞きつけた隣のクラスにいた高田先生が慌てて教室に入ってきた。

「里茉!聞いてくれよ!」

「大地!いい加減にしろよ?!」

「邪魔するな!」

オレの腕を引っ張る井上の手を振り払う。
それを見ていた高田が怒鳴った。

「名取か!?何してるんだ?!」

「うるせぇ!」

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