【短編】羽根月
オレは里茉の手を掴んだ。

「きゃ…!ヤッ…」

彼女は反射的にオレを拒否した。
そんなオレを高田と、数人のクラスメイトが止めようと

オレを押さえつけ、羽交い締めにする。

「…んだよ!離せ!!」

「名取!職員室に来い!!」

「痛ってーな!!邪魔すんな!オレは里茉に話しがあるんだ!」

オレは逃れようともがき、必死に彼女に手を伸ばした。

「里茉ぁ…っ!」

「…名取く…ん…」

手を伸ばした先に彼女がいる。
不安そうな顔で、女子どもに守られている。

この距離が永遠とも思えるよ。
こんなに近いのに
オレ達は…お互いがなんて遠い存在だったんだろう。


──時間がないんだ。一分一秒でも足りない。こうしてる間にも彼女は───…


   お願い

彼女に伝えたいんだ…

「里茉と付き合ってる事を知られたって構わない…!オレ達はずっと前から好き合ってた!」

「ダメ…言わないで!」

「もう隠す必要なんてないよ!愛してる…愛してるんだ、里茉!」

「ダメ…」

泣きながら、オレに目で話しかけてる彼女。

'大地、言わないで…'

──ゴメン
こんなに強引な事をして


「愛してる…だから里茉、結婚しよう」
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