【短編】羽根月
…知ってるよ

そんな事…言われるまでもなく分かっていたのに

冷静に大人の人に言われると、その言葉は重くオレにのしかかる。

オレ達の恋が急に間違いだったことのように思えてくる。

圧されちゃダメだ…

「子供なんだよ、君は」

オレはやっとの思いでお茶を一口飲んだ。


「分かってます…」

「今のうちに娘と別れて、きちんと学校へ行き…就職して…これからの長い人生を生きなさい

娘の事は忘れなさい」

「無理です。お…お義父さん…ぼ、僕は知ってるんです」

一瞬、父親の顔が強ばったように見えた。

「何を?」

「彼女の病気の事…」

心臓が飛び出しそうだ。どう言えば…結婚の許可がもらえるだろう?

多分上手になんか言えない。

大人を説得させられるほどの言葉を知ってる訳じゃないし。

「本来なら僕が成人して、社会人になって…それなりに自立してから里茉、さんを迎えにくるつもりでした。

それは彼女も知っていたし、二人で話し合ってもいました」

「じゃあ今、焦ることなかったんじゃないのか?」

「彼女の身体の事を知ってしまったから…時間がないんです!少しでも長く彼女のそばに居てやりたいんです!」
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