【短編】羽根月
バカな事してるって大人達は笑うだろう。

だから子供なんだと呆れて説教されるに違いない。

でも

彼女を棄てて逃げる事は出来ないし
そんな卑怯な大人になるくらいなら、バカになる方がマシだ。

「僕達にとって今は世間体なんてどうでもいいんです」

どれほど無様だって
里茉を失う事に比べれば何てことない。

何もしないで、他人の意見に従って
一生後悔なんかしたくないから──…

オレは少し後ろに下がり、ゆっくりと土下座した。
額が床につくくらい。そしてハッキリと声を大きくして言った。

「ずっと、一生!彼女を大切にします!
僕が彼女を幸せにします!

お願いです…里茉さんを僕にください!」



手の震えや、声の震えを両親は見破ったに違いない。

こんな頼りない子供に可愛い娘を託すなんて嫌だろう。

それでも何度もお願いした。


──これで本当によかったのだろうか…

『彼女の為に』と言いながら、オレの為って事の方が大きかったかもしれない。

結局、子供の自己満足だったのかもな

彼女にとって
選択の余地がなくなってしまった事は

少し後悔していた。

正しかったかどうかは



今もわからない───


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