【短編】羽根月
あれからすぐにオレは学校を辞めた。

そして、間もなく里茉も学校を辞める事になった。

オレがあんな事をしてしまったせいもあったし…里茉が高校の教師を続けるには少し無理があった。

もちろん病気のせい。

記憶障害も軽いものは頻繁に起きるようになっていた。

さすがに…自分でも気づいてるかもしれない。

そう考えると怖かったし、オレは彼女に確かめる事なんてできなかった。

里茉には学校を辞める事になってしまったのをオレはひたすら謝り続けた。

彼女はオレを責める事はなかったが…代わりに塾のバイトを見つけてきた。
塾の小学生クラス。

バイトだし、短時間だったし…仕事に生き甲斐を感じていたのは知っていたから
出来る限り続けさせてあげたかった。

当然、二人で生活しなきゃならないし。
オレも生活費を稼ぐ為にバイトを始めた。

とりあえずコンビニ。

だけど当面の生活費の工面や、その他色々な手続きは全てオレの両親や、里茉や…里茉の両親がしてくれたものだ。

17歳のオレでは、アパートの契約も出来ない。

自分はもう大人だと思っていたが──

偉そうな事は一人前に言うだけの

ただの非力な子供なんだと思い知った。
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