【短編】羽根月
「ダメ。外泊許可が出て、先生がいいって言わなきゃ連れてけないよ」

オレはため息をつきながら答えた。

多分ムリだから。
連れて行きたいけど…ずっと家にも帰れてないんだよ?

ドライブなんて許可がおりるはずがない。

いつもならそれで諦めるのに、里茉は退かなかった。

「少しくらい平気よ!今日は天気もいいし」

「ダーメ!しかも今日なんてムリだよ」

「大地、旅行に行きたいって言ってたじゃないの」

…里茉の為にな。
旅行に行きたいんじゃなくて、彼女と見た事のない景色を見て

記憶を共有したかっただけだ。

「先生には内緒で抜け出してさ、ちょっとドライブしようよ~」

「後で怒られるぜ?」

別に怒られる事が怖い訳じゃないけど、もし途中で何かあったらって考えると…素直に連れて行けそうになかった。

それでも里茉は強引にオレを口説いた。

「…どうしても今すぐに海が見たいの。今日はスゴく身体が軽くて調子がいいのよ。なかなか体調がいい日ってないでしょ?

今がチャンスなの」

…確かに。
今日の里茉はずっと自我を保っていたし、食欲もあった。

顔色も良さそうだし…彼女の言う通り今はチャンスなのかもしれない。

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