【短編】羽根月
「わかった。ありがと!大地。ねぇ、ドコに行くの?」

「ドコって…海が見える所だろ」

「うん!」

そう言って里茉は上機嫌で、ずっと流れる景色を眺めていた。

オレも嬉しかった。

「良かった…ずっと、何処かに行きたかったんだ」

「そりゃ良かった」

海までは約二時間。
里茉は眠らずに嬉しそうに話を続けた。




夕方の四時頃、車で走るオレ達の前に海が現れた。

「きゃあ!海よ!大地、海!見えた!?」

建物の間に見え隠れする海に里茉は興奮し、テンションも上がった。

「もう少し待ってな」

「早く早く!」

里茉に急かされて、オレは目的地で車を停めた。

急に里茉は不機嫌になり言った。

「ちょっとぉ…ココのどこが海なワケ?!」

「む、向こうに見えるだろ!?」

里茉の迫力に圧倒されながらオレは海を指さした。

そう。
オレ達がたどり着いたのは浜辺ではなく…海が見える山の上。

潮風が里茉の身体に障ると思ったからって事と
ここは従兄弟に教えてもらった穴場的な場所だったからだ。

上手い具合に山の斜面が海を見渡せる位置にあって、ずっと先まで地平線が見える。

それに

「夜になると星が綺麗なんだって」
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