【短編】羽根月
「ふぅん…」

若干納得できない感じで彼女は言った。

「少し待ってて。里茉が座れるように場所作るから」

オレは里茉にそう伝え、車から数m離れた場所に持ってきた大きなシートを広げた。

そこは草が繁っていて、座っても痛くないように思えた。

シートの上にさらに何枚かシートやマットを敷く。

これで準備OK。
上手い具合に木陰でもあり…まだ残る強く眩しい陽射しを

木々の葉が揺れながら和らげるような気がした。

そして自分が作った場所を再度見渡して、車に戻った。

「里茉、お待たせ!」

「何してたの?」

「特等席作り」

オレは助手席のドアを開け、里茉を抱きかかえて先ほど作った場所へ彼女を連れて行った。

そのまま彼女を特等席にそっと降ろす。
そして彼女が寒くないようにと毛布を掛けてオレは横になった。

山の上だからかな…?まだ気温は高いはずなのに、横になると
肌に当る風は少し肌寒い。

木陰だからかな。

里茉は座ったまま海を眺めていた。

太陽の光を反射してキラキラ光る海。

それはとても穏やかに見えた。

「なんかいいよね、海って…ずっと見ていたいなぁ」

「そうか?夏はいいけど冬は寂しいじゃん」
< 45 / 53 >

この作品をシェア

pagetop