【短編】羽根月
「もぉ!ロマンがないなぁ」

「海よりもっと良いとこに里茉と行きたいよ」

「何処に?」

「ハワイとか」

「やっぱ海じゃないの」

「あれ…っ」

「ふふっバカね」

里茉は無邪気に笑いながら、オレの隣で横になった。

オレ達は手を繋ぎながら、木の葉の間に見え隠れする空をしばらく見ていた。

──まだ青い空。

日が沈むまでにはまだ時間があって空は青さを残してる。

いつもより遠く、得難いものに見えた。

「寒くない?」

「うん。大地は?」

「大丈夫。…なぁ、明日もドコかに行こうか」

「帰らないの?」

「どうせ怒られるなら、もっと遊んで帰ろうぜ。それにさ、明日はオレ達が一緒に暮らし始めて100日記念日だもん」

「あ、そうなんだ?大地ってそういうの数えてたの?」

「う、うん。もちろん二人にとって記念日って大事な事だろ?」

オレはちょっとごまかした。
数えていたのは…別に理由があったからだ。

里茉が生きて、一緒に居られる日を数えてる。
一日二日と増えていくと、それが日常になり永遠に続きそうな気がしていた。

「そうだけど…なんか男の子がそういうのちゃんと憶えてるって意外な気がして」

「変?」
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