【短編】羽根月
オレは里茉を見た。
見慣れた彼女の横顔。

彼女は何も言わずジッと空を仰ぎ、やがて右手を天に向かって伸ばした。

「…見て、大地。もぅずっと…震えが止まらないの。寒いからじゃない。肌もこんなになっちゃった」

そう言ってオレに見せた右手は、微かに震えていた。
肌も張りがなく到底二十代とは思えない。

それは前から気づいていた。わかってたけど見ないフリをしていた。

そんなの一時の事だよな?またすぐに元気になるんだから

「自分が衰えていくのを毎日実感するの。自分でわかるくらいなんだもの…───あたし

もうすぐ
死ぬんだね…」


──何
    ヲ

  言ッテイル  ?

「大地と結婚したかったな…子供産んで
おばあちゃんになるまで大地の事…愛してあげたかったのに」

──止めてくれ

「ゴメン…ね。お願いきいてあげられないみたい…」



    嫌だ

 そんな話しないで


イヤだ
イヤだ
    いやだ…!



神様…

『──病める時も、健やかなる時も、彼女と共に歩み
永遠に里茉を愛する事を誓います』

本気で誓うから
他に何も要らないから

──だから
奇跡を
起こしてください





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