【短編】羽根月
「里茉、病院へ戻ろう」

「…いい…ここで大地と一緒に居たいよ…帰るのは後でいいから…ね…?」

「…」

太陽が沈みかかっていた。

燃えるような太陽は周りの雲さえも紅く照してる。

それを覆うかのように夜が訪れる。
オレ達は闇に紛れ込んだ。

やがてまた
辺りが明るくなる…

今夜は満月だった。

月の周りを光が輪を作って宝石のようにヒカリ輝く。

月明かりにも負けない程の星が幾つか見えて…多分、月がなければ教えられた通り
星がよく見える場所なんだろうと思った。

街の明かりもないし、天の川だって見えるだろう。



里茉…またここに来て今度は星を見よう




───そんな空の美しさや

肌に触れる心地よい風や

たまに聞こえる葉擦れの音も

この世界の全てが
今のオレには何も入らなかった。

だだ…里茉の心音を数えるだけ。


トクン…トクン…
トクン…トクン…




まだ生きてる。
この心臓は力強く動いてる…


里茉は懸命に生きてた

一秒一秒を必死に

オレ達は朝を待ち続けた。

時間が経つにつれ、彼女の呼吸は荒くなる。いつもと違うことは…分かっていた。

それでも里茉は必死に何かを話始めた。
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