【短編】羽根月
眩しいばかりの太陽が昇っても

もう里茉はいない。


彼女の命は数時間かけて消えた。




オレは泣き腫らした目で里茉を車に乗せ、病院へと帰った。

──これが最後のドライブだね、里茉…

そういえば
一緒になって初めて何処かに行ったんだ。

これがオレ達の
『ハネムーン』になっちゃったな…






オレに後悔はなかった。

もし病院に連れて行ってたら、と考える事もあるけど

これでよかった気がする。



最期の時に
オレをそばに居させてくれた里茉に
オレは感謝した。

逃げずに、里茉を愛せてよかった。



覚悟していた事だけど、想像していたよりもずっと落ち着いていた自分に驚く。

大人になったんじゃない。

きっと
一生懸命、里茉を愛したからだ。


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