【短編】羽根月
「ねぇ名取…」

「あー…えーと…いや、その、オレには里茉という彼女がいるしな、だから──」

オレが
しどろもどろになりながら焦っていた時

真奈が突然、泣き出した。

それもスゴい勢いで。

「ま、真奈!?どうしたんだよ?!」

間抜けなオレは、真奈の涙の訳が、まだ自分にあると思って焦っていた。

──そう。
てっきり告白されるのだと思い込み、彼女はフラれる事に泣いているんだと思っていた。

真奈は理由も言わず泣き続けた。オレはどうする事も出来ずにただ隣にいただけ。

これが彼女なら…抱きしめて、涙を止めようとするんだけどな。

しばらくして、真奈は涙声で言った。

「…ゴメンね」

「いや、いいよ」

「名取は…気づいてる?最近お姉ちゃんがオカシイ事」

「オカシイ?勘違いが多い事か?でも元々、天然系だし」

真奈はオレの腕を掴み、すがるように言った。

「どうしよう…名取、あたしどうしたらいいかわかんないよぉ…っ」

「…真奈?」

「お姉ちゃんが──」







───里茉の異変に

最初に気付いたのは母親だったそうだ。


里茉は一日に何度も食事をしようとしたり
何度も時間を聞いてきた。

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