わたしから、プロポーズ


ヒロくんの前だと地か出せる?

その言葉に思わず笑ってしまった。

「私、そんな猫を被ってたかな?」

「被ってた、被ってた。今日、最初に課長と挨拶に来たろ?あの時、思ったね。莉緒は猫を被ってるって」

わざと意地悪く言うヒロくんに、握り拳で叩く真似をする。
だけど、それは素早く交わされてしまった。

「良かった。少しは元気出たな」

ヒロくんは優しい笑顔を向け続ける。
それに私は癒されていた。

「ありがとう。ヒロくんのお陰で元気が出た」

そう言って、ようやく私も笑顔を返せたのだった。

「なあ、何で結婚を迷ってるんだ?伊藤課長の事は好きなんだろ?元カノの存在が嫌なくらいなんだし」

「それを聞かれると困るというか、自分でも分かってない事が多いの。ただ、友達の話を聞いてから、結婚生活が色褪せて見えたんだよね」

「友達?」

頷いた私は、ヒロくんに和香子の話をしたのだった。
すると、ヒロくんは妙に納得した様で、数回頷いた。

「なるほどなぁ。俺、何となく分かったよ。莉緒が結婚に迷う理由が」

「えっ!?何?教えて」

こんな簡単な説明で、理由が分かっただなんて。
さすがヒロくんだ。

『頼りになるお兄ちゃん』

それは今でも健在だった。

「莉緒は、結婚生活に夢を見てたんじゃないか?それが、実はリアルな生活を送るだけだと思って、結婚が色褪せて見え始めたんだよ」
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