わたしから、プロポーズ


タクシーの中で、キスをされた手を握りしめる。
ほんの少し唇が触れただけなのに、こんなに右手を温かく感じるのは何故だろう。

ヒロくんが私を好きだったという事実が、私を子供の頃にタイムスリップさせる。

もしあの頃、ヒロくんから告白をされていたら、どんな思い出があったのか、どうしてもそれを考えてしまっていた。

そんな心にざわつきを感じながら、タクシーは自宅へ着き部屋へと向かう。

時刻はすっかり日付けを越え、2時になっていた。

「ただいま」

時間が遅くなった事への後ろめたさを持ちながら、玄関のドアを開ける。
その瞬間、瞬爾もまだ帰っていない事に気付いた。
部屋が真っ暗だ。

「瞬爾•••?」

念のためにベッドルームを覗いても、やっぱり姿はなかった。

「まさか、まだみんなと•••?」

明日は休日だ。
羽を伸ばしているのかもしれない。
遥たちも一緒なんだから、心配する必要なんてない。
そう思うのに、美咲さんも一緒なのかと思うと、変な動悸がしてくる。

自分だってヒロくんといて、挙句に手とはいえキスをされたのだから、瞬爾を責める事は出来ない。

だけど、やっぱり気になって仕方なかった。

その夜、頭が覚醒してしまったらしく、全く寝付けれなかった。
瞬爾はいつ帰ってくるのだろう。
そればかりを考えていたからか。

だけど、瞬爾は一晩帰って来なかった。
まさか、みんなで朝まで過ごしたのか。
そう思いたいのに、心では完全に疑ってしまっていた。

美咲さんと二人きりだったのではないかと。
< 112 / 203 >

この作品をシェア

pagetop