わたしから、プロポーズ
「キス?」
「うん。タクシーで帰る間際に。でもね、ヒロくん言ってたの。私と瞬爾に、うまくいって欲しくないとは思ってないって」
「思ってないけどキスしたって事か」
瞬爾は、自嘲気味に笑うと、私の左手を取った。
そして、ゆっくりと指輪を外したのだった。
「これは、ただ莉緒を縛るものでしかないな」
そして、指輪を握り締めたのだった。
「瞬爾?」
指輪を外された事に、自分でも驚くくらいに動揺している。
この間は指輪をはめられたのに、今日は外された。
その意味の違いは何?
速くなる鼓動を感じながら、瞬爾を見つめる。
すると、瞬爾はゆっくりと言ったのだった。
「しばらく、距離を置かないか?莉緒も
俺と離れていれば、気持ちも冷静になれるだろ?」
「え•••?」
それは、何よりショックな宣告だった。
まさか、瞬爾から距離を置きたいと言われるなんて、想像もしていなかったから。
今、寿史さんの言葉の言葉が蘇る。
瞬爾がいつまで私を受け止めてくれるか。
それはもう、限界なのかもしれない。
「私に出て行けって事?」
震える声でそう言った私に瞬爾は頷き、そして言ったのだった。
「ゆうべは、莉緒の推察通り美咲と一緒だった。それ以上の事は想像に任せるよ」