わたしから、プロポーズ


和香子が私を呼び出すなんて、ただ事ではない。
会社で一緒だった時でさえ、ほとんど絡みはなかったのに。

タクシーに乗り駆けつけると、インターフォンを押したと同時にドアが開く。
ただ、顔が覗く程度にしか開けてくれなかった。
それでも和香子に何かあったという事は、すぐに分かったのだった。

「和香子!?どうしたの?何があったのよ」

和香子の髪は乱れていて、服もカーディガンを羽織ってはいるが、シャツはボタンが掛け違えてある。

「入って•••」

生気を失った様なうつろな目をした和香子に促されるまま、リビングへ向かった。
この間来た時と、雰囲気は変わっていない。
ただ一つ、どこか違和感を感じるのだった。

「ごめんね、莉緒。座って。課長は休みなんでしょ?」

「うん。でも気にしないで。向こうも用事があるから」

まさか、家を追い出されたとは言えない。
スポーツバッグを横に置き、ソファーに座ると、和香子はその向かいに座った。

やっぱり何かあったのだ。
服の乱れが半端ない。

「ねえ、和香子。何があったの?ただ事じゃない感じだけど」

恐る恐る聞くと、和香子は涙を流したのだった。

「旦那に、乱暴されたの」

嗚咽を漏らして泣く和香子に、思わず絶句した。

「乱暴って?殴られたの?」

すると、和香子は力なく首を横に振った。

「無理矢理•••。犯されたの」

「え?」

犯されたって、それはつまり体の関係を言っているのか。
相手が他人なら、その表現は理解出来るけれど、旦那さんだ。
なぜ、そんな言い方をするのだろうか。

「旦那さんに犯されたって、どういう意味?」
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