わたしから、プロポーズ


「莉緒!良かったわ。電話しても出ないんだから。早く入って」

久しぶりの実家は、私の心とは裏腹に、門から玄関ドアまでの道に、色とりどりのプランターの花が咲き乱れていた。

「え?私を待ってたの?」

連絡も無しに帰って来たというのに、お母さんは驚くどころか、待っていたとばかりに私を急かしている。

「な、なんなのよ。何かあった?」

リビングまでの廊下を急ぎ足で進みながらお母さんに尋ねると、横目に睨まれてしまった。

「何かあったのはそっちでしょ?瞬爾くんが来てるわよ」

「えっ!?瞬爾が?」

立ち止まりそうになった私の腕を、お母さんは無理矢理引っ張ると、リビングのドアを開けた。

そこにはスーツ姿の瞬爾が、ソファーに座っていたのだった。
そして、入ってきたことに気付いたお父さんが振り向くと、私に瞬爾の隣に座る様に促したのだった。

「瞬爾くんから、だいたいの事は聞いた」

座ったと同時に、お父さんは真顔でそう言った。
どうやら瞬爾は、私との事を説明に来たらしい。

「何て聞いたの?」

「二人の結婚が、保留になっているという事だ」

やっぱり、その話だったか。
うなだれた私に、瞬爾は優しく声を掛けたのだった。

「思った通り、実家へ戻ってきたんだな。それなら安心だ」

今さらながら、瞬爾の優しさに胸がときめく。
和香子の言う通り、好きな人だから結婚を夢見ていたのに。
それだけで、理由は十分だったのに、どうして違う理由を探そうとしたのだろう。
どうして、結婚生活を色褪せたものに見てしまったのか。
それを、こんな時になって気付き後悔しても遅い。

ヒロくんにキスをされた後ろめたさから、瞬爾の笑顔から顔をそらしてしまった•••。
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