わたしから、プロポーズ


「言い訳?」

「ああ。ゆうべ、実は飲み過ぎで記憶を無くしててさ。情けない話だけど、気が付いたらホテルにいたんだ」

「うん•••」

覚悟していたとはいえ、改めて聞かされると辛いものがある。

「起きた時には焦ったよ。美咲は置き手紙を残して帰ってて。まあ、それで美咲と一緒だったって分かったんだけど、一体何があったか記憶になくてさ」

「何にも覚えてなかったの?」

瞬爾は頷くと、苦笑いを浮かべた。

「ジャケットは脱いで、ネクタイとシャツのボタンは外してたけど、裸ではなかったんだ。だけど、何をしたか分からないだろ?とにかく急いで帰ったけど、莉緒に顔向け出来なかったよ」

顔向け出来ないのは私の方だ。

「それで、美咲に尋ねに行ったんだけど、俺かなり酔いつぶれたらしくて、美咲がホテルに連れて行ってくれたらしいんだ」

「じゃあ、出て行ったのは美咲さんに確認をしに行ったって事?」

瞬爾は頷いた。

「美咲は俺をホテルに残してすぐに帰ったらしいんだけど、かなり怒られたよ。莉緒には、一応言い訳。といっても、莉緒がそれを理由で結婚を迷ってるわけじゃないのは分かってる」

「え?」

言葉が続かない私の手を優しく握った瞬爾は、ゆっくりと言ったのだった。

「仕事、引っかかってるんだろ?ずっと営業畑で頑張ってきたんだもんな。いきなり、仕事を辞めて家庭に入って欲しいって言われて、莉緒が戸惑うのは当然だ」

「瞬爾、それは•••」

きちんと言わなくては。
将来の不安を、主婦業のせいにしていたと。
自分の毎日が変わる事が不安だったのだと。

だけど瞬爾は、私に話す事を許してくれなかった。
そして話を続けたのだった。

「本当は、それを含めて相談して欲しかった。本音を聞かせて欲しかったんだ。だけど、莉緒がそれをしてくれなかったのは、俺に責任があると思ってる。ちゃんと、俺が気持ち汲み取るべきだった」
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