わたしから、プロポーズ
テラス席から手を振る遥を見つけた途端、思わず声を上げてしまった。
「広田さん!?何で、ここにいるんですか?」
遥の向かいに座っていた広田さんが、私に苦笑いで手を振ると、遥の隣に席を移った。
それにしても、なぜ広田さんがここにいるのだろう。
他に誰かが一緒という雰囲気もない。
ゆっくりと向かう私に、遥は動揺することなく言ったのだった。
「デート中だったんだからね。呼んだ事を感謝しなさい」
「デート中?誰と?」
「タカシよ!広田さんと私、付き合ってるの」
広田さんと遥が付き合っている?
その意味を理解するのに、数秒かかった後、再び私は声を上げていたのだった。
「ええー!?」
「ちょっと莉緒ってば、声が大きいって!」
遥に手で口を塞がれ、席へ着かされた私は、遥と広田さんを交互に見ていた。
すると、広田さんが恥ずかしそうに笑ったのだった。
「ビックリしたろ?実は、俺たちが付き合ってる事は、誰にも言ってないんだよ」
「なるほど•••。でも大丈夫なんですか?こんな場所で会ってて•••」
すると、すかさず遥が反応した。
「別に隠すつもりはないのよ。ただ、誰にも会わないだけで。かといって、いちいち報告するまでもないかなって、そう思ってるだけ」
思い返してみれば、広田さんが二課に顔を出す度に相手をしていたのは遥だった。
それは、単に遥の性格でそうしているものだとばかり思っていたけれど、そうではなかったって事か。
それにしても、遥は恋人の前でもアッサリしているものだ。
「それより、莉緒は何があったの?泣いてたでしょ?課長と何かあった?」
私が泣いていたら、やっぱり瞬爾と何かあったと思うのか。
「実はね•••」
この際、広田さんにも聞いてもらおう。
そう思って、二人に包み隠さず話したのだった。