わたしから、プロポーズ
「大役?」
「そう。今回のプロジェクトは、期間限定の短いものな上、課の垣根を越えてみんなで行うものなんだ。その中で、坂下さんには課長と同じ現場で動いてもらう」
「それは嬉しいですけど、さすがに公私混同過ぎて、実際にやるわけにはいかないですよ」
現場を担当したい人は山ほどいるのに、個人的な理由で仕事をするわけにはいかない。
それに『瞬爾の恋人だから貰えた』と思われる事だけは嫌だった。
すると、広田さんが笑ったのだった。
「違うよ。そうじゃない。坂下さんの能力は、課長に関係なく評価されているんだ。だから、水面下では決まってるんだよ現場担当が。だから、思い切りやってみたらいいんじゃないかな?」
「思い切り?」
「うん。仕事へのやりがいと、課長との未来。坂下さんにとって、どちらがより大切なのか。選びたいのか。きっと、どちらを選んでも、坂下さん自身の未来には確実に繋がっていくと思うよ」
私の未来へ繋がっていく•••?
広田さんの言葉は、私の胸にじわじわと浸透する。
まるで、元気を貰えたみたいだ。
「広田さんて、素敵な人だったんですね。全然気が付きませんでした」
「それはひどいな」
ケラケラと笑う広田さんに、私は苦笑いをした。
「でも、遥はそれに気付いてた。私はいつも、人のいい所を見過ごすみたいです」
「そんな事はないよ。坂下さんだって、課長をたくさん見てきたからこそ、迷いが生まれただけだ。坂下さんの話を聞いてたら、俺も早く結婚したくなったなぁ」