わたしから、プロポーズ
「それは、私も一緒よ。憧れの伊藤主任からの告白なんて、夢みたいだったもの」
そう言った私の頬を、瞬爾は優しく触れる。
「あれから、仕事をさらに頑張れた気がするよ。こうやって、課長職に就けているのも、莉緒のお陰だと思ってる」
「ううん。私こそ、瞬爾と一緒で、毎日どれだけ幸せか…」
これ以上の幸せを望んだら、罰が当たりそうだけれど、やっぱり願わずにはいられない。
“結婚”というゴールを。
「それで、今週末は外で食事しないか?フレンチの美味しい店があってさ。予約が取れたんだよ」
「えっ?」
図々しくも胸は一気に高鳴り、自分勝手な期待が膨らむ。
もしかして、ようやく貰える?
プロポーズの言葉を…。
だけど、単に付き合った記念日だから、食事をしようと言っているだけかもしれない。
でも、去年はわざわざ食事になんて出かけなかったから。
だから、期待してしまう。
改まった場所での食事自体、久しぶりなのだ。
「週末、楽しみにしてるね」
気持ちを自制しようとすればするほど、それは高ぶってしまった。
「楽しみにしてて…」
瞬爾は唇をそっと重ねると、私を抱きしめてくれたのだった。