わたしから、プロポーズ


そんな私に、瞬爾は少しの間絶句をしていた。

「いや、その人の悪評は他社からも聞くほどで、無駄に坂下の評判を落とされるだけだ。俺が担当する」

「でも、それじゃ課長が嫌がらせをされるんじゃ•••?」

すると、瞬爾は苦笑いを浮かべたのだった。

「肩書きには弱いらしいから」

それはきっと、『課長』という肩書きがあるから大丈夫だという意味なのだろう。
それならば、ますます引っ込むわけにはいかない。
美咲さんだって、それくらいは知っているはずだ。
知っていて私に頼んできたということは、美咲さんからの挑戦にも思えたのだった。

「大丈夫です。私、きっと上手にやりますから。やらせてもらえませんか?」

「だけど•••。本当にいいのか?」

強く頷いた私に、瞬爾は眉を下げて微笑んだのだった。

「坂下が、そこまで言うなら頑張ろう。俺が必ずサポートするから」

「ありがとうございます」

瞬爾が側にいてくれるなら、なおさら大丈夫だ。
笑顔を向けた私に微笑み返して、瞬爾はデスクへ戻ったのだった。

「すごいじゃない、莉緒。嫌がらせも、案外棚からぼた餅かもよ?」

デスクへ戻る瞬爾の背中を見送っていると、遥がイスを滑らせ、横から声をかけてきたのだった。

「遥!?聞いてたの?」

気恥ずかしさもあって軽く睨む。
すると遥は、まるでからかうかの様にニヤリと笑みを浮かべたのだった。

「聞こえたの。堂々と話してるんだもん。莉緒たちが別れた事を知ってる方が少ないんだから、社内で堂々とイチャついたと思われただろうねえ」

全く遥はこの後に及んで、そんな事を言うか。
返事をするのもバカバカしくて無視をしようとした時、耳元で囁かれたのだった。

「このプロジェクトが成功したら、伊藤課長の海外赴任が正式に決定するみたいよ?」
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