わたしから、プロポーズ
「このプロジェクトで?それ、本当なの?」
興奮する気持ちを抑え、念を押すように聞くと、遥は頷いたのだった。
「聞いたから」
そう言って顎で広田さんを指す。
なるほど、だから情報が筒抜けなのか。
どうやら二人は、想像以上に仲が良さそうだ。
「だけど、伊藤課長に知ってるって言っちゃダメよ?」
今度は、遥の方が念を押すように言った。
「何で?」
「だって、口止めされてるから。莉緒には、余計なプレッシャーをかけさせたくないらしいわ。ま、私たちにはかけさせても平気みたいだけど」
遥はわざとらしく笑っている。
瞬爾が、そんな風に気を遣ってくれているなんて、まるで想像もしていなかった。
それに、今回のプロジェクトが、そこまで重要な意味を持つとも知らなかったし•••。
「莉緒にとっても岐路に立つプロジェクトね」
「岐路って、どういう意味?」
「だって、もしプロジェクトに問題が生じて失敗に終わったら、課長の海外赴任の話は当分ないのよ。もし、この難しい仕事を莉緒が失敗したら•••?課長は日本に残る。そして莉緒は、結婚後も仕事を続けられるかも?」
なんて事を言うのだろう。
いくら私でも、そんな考えは持っていない。
「やめてよ遥。私、そんな風に思わない」
少しでも、そんな風に見られたのなら心外だ。
すると、遥は続けたのだった。
「内田さんが、その事情を知らないはずはないのよね。だから、嫌がらせをしてるんだと思う」
「う、うん•••」
そう言われれば、反論出来ない心当たりがある。
きっと瞬爾の事だ。
当たり前の様に、美咲さんに言っているに違いない。
「でも遥。美咲さんとしては、私と瞬爾を引き離す方が好都合じゃないの?」
すると、遥は険しい表情になり首を横に振った。
「そしたら、自分も課長と離れ離れじゃない。だけど、莉緒の失態で海外赴任が白紙になるんじゃ、莉緒が罪悪感にさいなまれるでしょ?それを狙ってるのよ」