わたしから、プロポーズ


美咲さんが、そこまて考えているというのか。
もしそうなら驚きだけれど、大事な自分の仕事だろうに、私情を挟み過ぎている事にも驚きだ。

「罪悪感って、どういう意味よ。遥ってば、私より何でも知ってるって感じね」

「ひとごとだからよ。もし、莉緒のせいで失敗したら、課長に言える?今の莉緒の本当の気持ちを」

真っ直ぐ私を見る遥の視線に、全てが見透かされている気がした。
はっきりと、遥に今の気持ちを話したわけではない。
だけど分かっているのだ。
私がこのプロジェクトに賭けているということを。

「内田さんは、そこを狙ってるのよ。莉緒なら必ず、課長の海外赴任の裏事情を知るはずだと踏んでいるんだろうし、いざとなれば自分が話せばいいんだしね」

「だから、私に難しい仕事を担当させて、失敗させようとしてるって事?」

すると、遥は頷いた。

「そうよ。さすがに担当者とグルになってるって事はないだろうけど、莉緒にトドメを刺すつもりよ。罪悪感で、課長を諦めさせるというシナリオね」

「トドメ!?」

まさか、そこまで本気なのか?
青ざめる私に、遥は言ったのだった。

「内田さんがそこまでするのは、課長の心には莉緒がいるからよ。だから、強行手段に出たんだと思う。だから、莉緒は負けないで」

負けないでって、私は美咲さんと戦わなければいけないという事なのか?
もちろん、元カノだった以上、存在が気にならないわけではない。
だけど、私が結婚を迷った理由に、美咲さんはなかった。
単に心をざわつかせる、その程度の人だ。

「私は、私と戦うまでよ」

なんて、カッコイイ事を言ってみたけれど、もちろん美咲さんの本意が気にかかっていた。
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