わたしから、プロポーズ
プロポーズ
「今月の売上一位は、一課だ!おめでとう」
月末には、恒例の営業課毎の売上発表がある。
今月の一位は瞬爾の課が取り、拍手をする音が一層大きくなった。
すると、課長である寿史(ひさし)さんから、嫌みたらしく睨まれ小さくなる。
「坂下~、お前はニ課の社員だという事を忘れるなよ?」
じりじりと歩み寄って来た課長は、芳川(よしかわ)寿史課長。
実は、瞬爾の同期で友人でもある。
同じ33歳の課長で、どちらが先に出世コースを伸ばしていくか、密かにみんなの注目の的でもあった。
その寿史さんは、ラグビーをやっていただけあり、体格はしっかりとしていて、全体的に大きい。
顔立ちも濃く、いかにもスポーツマンといった雰囲気だ。
その頼もしいオーラで、年下の女性社員からの人気が強い。
そんな課長の事は、プライベートでは上司と部下の垣根を越え、“寿史さん”と呼んでいるのだった。
「すいませぇん…。つい…」
だって、みんなから拍手をされる瞬爾が誇らしいのだから、テンションも上がるというものだ。
「あいつの応援もいいけど、お前も頑張れよ?ニ課の成績は、お前と来島(くるしま)の肩にかかってるんだ」
「はぁい」
気のない返事をすると、私たちの話が聞こえたのか、遥も苦笑いを浮かべた。
私と遥の肩にかかってるか…。
それは、嫌などころか嬉しい事だけど…。