わたしから、プロポーズ
「坂下さん、そこのCDとレコードを取ってくれる?」
「はい」
テーブルに山積みになっているCDとレコードを抱えると、久保田さんのところへ持って行く。
本当にどれも知らない音楽ばかりだ。
それに、レコードをどうやって使うのかと思ったら、ちゃんと繋げるオーディオがある事に感心した。
「レコードを使える機械ってあるんですね。それも新しい物が」
思わず口に出すと、またもや久保田さんの嫌みが返ってきたのだった。
「電機メーカーに勤めているのに、そんな事も知らないのか」
「す、すいません」
電機メーカーでも、音響部門は小さいのだ。
無知だったのは私の欠点だとしても、あんな言い方は無いと思う。
謝罪の言葉に、だんだんと気持ちが無くなってきた。
仕事といっても、ただ立っているだけ。
それも、指示があるまで何も出来ないのでは、何の為にここにいるのか分からない。
「久保田さん、専用の助手の方を付けられたらどうですか?」
思わず口にしたその言葉は、私なりの怒りが込めらていた。
「何?」
予想通り、久保田さんは鬼の形相で私を睨んでいる。
自分は初対面の私に遠慮なく感情をぶつけるくせに、私が言うとこんなに怒るなんて子供と一緒ではないか。
「だって、機械操作もバッチリですし、後は久保田さんの思う様に動ける人がいればいいんですよね?だったら常に、専門の助手を付ければいいんじゃないですか?」
と、タンカを切った後青ざめた。
このプロジェクトは、絶対に失敗は出来ないのに。
今私は、久保田さんを思い切り敵に回したと思う。