わたしから、プロポーズ
そうだ。
瞬爾のベッドルームにあったピアスは、何も解決されていない。
遙は私と瞬爾がやり直せるのを当然の様に言うけれど、肝心の瞬爾の心は見えないままだ。
「お疲れ様です」
私も遙も事務的挨拶をし、その場を去ろうとした時、美咲さんから呼び止められたのだった。
「坂下さん、ちょっと」
「はい•••。何でしょうか?」
振り向く私の顔は、どれほど強張っているだろう。
そして、美咲さんの顔は何て余裕たっぷりなのだろう。
「後5分ほどしたら、第一会議室へ来てくれないかしら?今朝、打ち合わせをした場所よ。覚えてる?」
「覚えてます。だけど、5分後ですか?」
「そう。あなたに見せたいものがあって。ドアは少し開けておくから。ノックも必要ないからね」
そんな意味不明な言葉を残して、美咲さんは廊下の奥へと消えた。
「ちょっと莉緒。怪し過ぎるわよ。本当に行くの?」
遙も不審に思ったらしく耳打ちをしてきたけれど、私は頷いた。
「また嫌がらせかもしれないけど、美咲さんから逃げるわけにはいかないから」
見せたいものとは、一体何だろう。
緊張が少し、小さく息を吐いて、言われた通りに5分後に会議室へ向かったのだった。