わたしから、プロポーズ


もし、私が瞬爾と結婚をしたらどうなるのだろう。

会社は、社内結婚には寛容だ。

だけど、夫婦で同じ部課にいる事を好まない。

だから、どちらか一方が異動になるのが通例だけれど、私たちの場合は明らかに私が異動になるのが目に見えている。

とはいえ、私は入社当時から営業しか知らない。

本社で異動となれば、事務職以外はない。

今さら事務職に異動になったところで、苦手な事務仕事を覚える気にはならなかった。

それなら、結婚退職!?

まるで想像もつかない言葉だけれど、そういう可能性もあるわけで…。

今夜、約束のお店で言ってもらえるだろうか。

“結婚”という言葉を。

一課の営業ボードを眺めながら、どこか人ごとに見えてきたのは、きっとそんな事を考えたからだ。

まだプロポーズをされたわけでもないのに、気が早いか。

ニ課にある『坂下』の文字が消える事を想像すると、どこか切なかった。
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