わたしから、プロポーズ
「分かりました」
急いでレコードを抱えると部屋を出た。
美咲さんと同じじゃダメだ。
瞬爾にとっても、会社にとっても大事な仕事なのに、私情を挟んだ挙句、失敗を願うなんてあり得ない。
自己嫌悪に陥りながら、明日は久保田さんへ必ず謝ろうと決めたのだった。
どんなに辛い事があったからといっても、あの言い方はなかった。
瞬爾の為に成功してみせる。
だから、素直に謝らせてもらおう。
そう意気込んでいたのに、事はそう都合良くはいかなかったのだった。
次の朝、私は久保田さんの洗礼を真に味わう事になってしまった。
「全部返した!?」
周りのスタッフ皆が注目するほどの大きな声で、久保田さんは私に怒号を飛ばす。
「すいませんでした!レコード全部だと思ったもので•••」
もちろん、瞬爾たちも心配そうに見守る中で、私はひたすら頭を下げるしかなかった。
「俺はレコードを返せとは言った。だけど、全部だなんて言ってないぞ?何で、どれを返すか確認しなかったんだ?」
「思い込んでいました」
分かっている。
これがわざとだという事は。
久保田さんは初めから、私のミスを見越して紛らわしい言い方をしたに違いない。
あんな生意気なタンカを切ったのだ。
これが、久保田さん流の担当者外しなのだろう。
「思い込みか。初歩的なミスだな。じゃあ、今を最後に担当者を辞めて貰えるか?」
久保田さんの容赦ない宣告に、周りで見ていた人たちが息を飲む。
そして、私も完全に圧倒されていた時だった。
「ちょっと待ってください」
そう言って前に出てきたのは瞬爾だった。