わたしから、プロポーズ
「伊藤課長、何だ?ああ、そう言えば彼女の上司は君だよね?じゃあ、もちろん責任は君が取るということか」
「もちろんです。申し訳ありませんでした。ただ、昨日返却したレコードで必要な物は、私が探しに行きます。それまでは彼女を、今まで通りに担当者でいさせてやってもらえないでしょうか?」
頭を下げる瞬爾に、美咲さんも心配そうな顔を向けている。
私のミスが、とんでもない事態を引き起こしてしまった。
瞬爾に責任を取らせるだなんて、一番やりたくない事だったのに•••。
「それは、虫がいい話だよなぁ。だいたい、担当を外せばいいと言ったのは彼女だよ?」
久保田さんは鼻で笑うと、瞬爾を見下す様に見ている。
だけど、瞬爾はいたって冷静に、だけど真剣な眼差しを向けた。
「仰る通りです。だけど、彼女も今回の仕事は意気込んでいました。なぜ、久保田さんにその様な事を言ったのかは分かりませんが、どうかもう少し担当をさせて頂けませんか?」
すると、久保田さんはため息をついたのだった。
「分かった。ただし、今日一日だけだ。そして、今日中にレコードを探してきてくれるか?」
「分かりました」
久保田さんは瞬爾に、必要な楽曲のメモを手渡している。
瞬爾にだって仕事があるというのに、自分の尻拭いまでさせるのか?
メモを見て確認をしている瞬爾の姿を見ていると、自然に気持ちが口をついて出たのだった。
「久保田さん!私が行きます。久保田さんは昨日、私に最後の仕事だと言って、レコードの返却を頼まれました。だけど、私はそれをきちんと出来ていません。お願いです。最後の仕事をさせてください」