わたしから、プロポーズ
「坂下•••」
驚いているのは瞬爾で、今までに見せた事のないくらい心配そうな目で私を見た。
それでも、久保田さんは動揺をするでもなく、淡々と言ったのだった。
「見つけられる?今日中だよ?」
「見つけます。必ず。お店は検索済ですから」
今ほど、牛島さんからのアドバイスを有難く思う事はないだろう。
そしてあの夜、店の検索を瞬爾が協力してくれた事にも感謝だ。
「行ってきます」
瞬爾からメモを受け取ると、その場を走り去った。
とにかく急がなければ。
すると、美咲さんが小走りで追いかけてきたのだった。
「ちょっと待って坂下さん。あなた、本気なの?きっと無理よ」
「何が無理なんですか?私急いでいますので、失礼します」
美咲さんを無視して向かおうとすると、それでも背後から声が聞こえてきた。
「今回の事は、毎回お馴染みの久保田さんのテなのよ。きっと、もう誰かに借りられて無理だわ。おとなしく引っ込んだら?」
その言葉に、向かっていた足は止まる。
そして振り向くと、美咲さんを睨んだのだった。
「美咲さんは、私に仕事を失敗すればいいと思ってるんですよね?」
すると、美咲さんは睨みつけながら答えたのだった。
「邪魔だとは思ってる。もういい加減に中途半端な気持ちで、瞬爾の周りをチョロチョロしないでよ」
「美咲さんが私をどう思おうと勝手です。だけど、瞬爾を巻き込むことを何とも思っていないなら、最低だと思います。それが愛情ですか?私は、キスをすれば相手と距離が縮まるとは思いません」
結局、私が気になっている事はそこだ。
二人のキス。
それを考えてばかりでこんな事態になったのだから、自分で自分の尻拭いをするのは当然。
美咲さんに偉そうな事を言いながらも、自分自身が一番最低だと本当は分かっていた。