わたしから、プロポーズ
車が着いた時には瞬爾はすでに出てきてくれていて、社用車を見つけると笑顔を向けてくれた。
「瞬爾、本当にありがとう。場所を教えて。行ってくるから」
これは私に課せられた仕事。
だから瞬爾に頼るわけにはいかなくて、場所を聞いて一人で向かうつもりだった。
だけど、瞬爾は穏やかな笑みを崩すことなく、首を横に振ったのだった。
「一緒に行かないなら教えないよ」
「ええ!?」
意地悪く笑顔を浮かべた瞬爾は、軽く運転席のドアに手をかける。
「運転、替わるよ。もう疲れたろ?」
「だけど•••。これは、私がやらなければいけない仕事だから」
優しくされればされるほど、胸が高鳴る。
瞬爾に会う度に込み上げる思いは、恋心ばかりだ。
口では偉そうに言っても、結局仕事に集中出来ていない。
「莉緒、言ったろ?一人で抱え込む必要はないんだ。仕事をする時はチームでするのに、ミスは一人の責任か?違う。みんなでフォローするべきものなんだ」
「だけど、今回は私のワガママで起こった事だから」
「例えそうであっても、莉緒は俺の部下だ。見捨てられないよ。ほら、ドアを開けて出てこいよ」
もう拒む事は出来ない。
だって、これ以上にないくらいの優しさを感じるから。
言われた通り運転席を出ると、瞬爾が代わりに乗り込んだ。
「早く助手席に乗って。急ごう。特別に店を開けてもらってるんだ」
「う、うん。分かった」
急いでドアを開けると、助手席に乗り込む。
それを確認すると同時に、瞬爾は車を走らせたのだった。