わたしから、プロポーズ
写真で見た旦那さんそのもの。
呆然と立ち尽くす私に、事情を知らない久保田さんと旦那さんは不審な目を向けている。
「おい、何だよいきなり大声を出して」
久保田さんに腕を小突かれ我に返った。
「あの、私•••。樫木さんを知っているというか、奥さんを知っているというか」
「はあ?何を言ってるんだよ」
ハッキリ言っていいものかと迷っていると、旦那さんの方から声をかけてきた。
「もしかして、和香子を知っているんですか?社名はあらかじめ聞かされていたので、まさかとは思っていましたが」
旦那さんは軽く会釈をして、私に愛想の良い笑顔を向ける。
もし、和香子から何も聞かされていなかったら、きっと感じの良い人という印象を持っただろう。
だけど、犯されただの、浮気をされているだの聞かされているだけに、自然と敵対心を持って見てしまう。
「はい。同期でした。坂下莉緒です」
無愛想に自己紹介をすると、私の名前に聞き覚えがあるのか、旦那さんの表情が一瞬固まった。
「へえ。偶然だな。こいつさ、今奥さんとケンカ中らしいんだ。相談に乗ってやってよ」
「えっ!?私がですか?」
それは微妙だ。
話などしたら、きっと問い詰めそうだから。
どうして浮気をしているのかと。
一方的に戦闘態勢に入った私は、旦那さんの正面に座ると、その目を真っ直ぐ見つめたのだった。