わたしから、プロポーズ


私の頭は、どうもリアルな夢を見せたがるらしい。
瞬爾は、明らかに戸惑いを見せている。
どうして、キスくらいで戸惑うのか。
夢なんだから、図々しいものを見せて欲しいものだ。
じれったさを感じながら、顔を見上げて懇願した。

「私、知ってるんだよ?美咲さんとキスしてた事も、抱きしめてた事も。あ、ついでにベッドルームに落ちてたピアスもね。だから、キスしてよ。美咲さんじゃなくて私に」

言いたくても言えなかった事を、こんな場所で吐き出す。
だって、現実ではやっぱり言えないから。
すると、途端に瞬爾の顔が青ざめた。

「莉緒、それは誤解で•••」

「いいの。言い訳はいいから」

夢の中で聞いたところで意味なんてない。
それよりも、目が覚めてしまう前にキスをして欲しかった。

「ねえってば。キスしてよ」

腕を軽く引っ張ると、次の瞬間には引っ張り返されて、そしてキスをされたのだった。
それは、息が出来ないくらいに舌を絡ませ合うもので、自然と甘い声が漏れていた。

「瞬爾•••」

乱れた呼吸のまま、うつろな目で見つめると、瞬爾が小さな笑顔を浮かべて言ったのだった。

「莉緒は何で、俺とキスしたいんだ?」

「何でって•••」

意地悪な質問をするものだ。
だけど、せっかくだから答えておこうか。
キスをしてくれたお礼に。

「瞬爾とキスがしたかったからだよ?」

そう答えると、瞬爾はケラケラと笑った。

「何だよ、それ。もっと違う答えを期待してたんだけどな」

ごめんね、夢の中の瞬爾。
ここで、本音の本音は話せないの。
だって、リアルの瞬爾に言いたいから。

「それより、もっとキスして」

リアルで出来ない事を今してよ。
すると瞬爾はもう一度、唇を重ねてくれたのだった。
いつまでも、いつまでも、私たちは絡み合うキスを続けていた。
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